なた豆茶を世に出すためのバリューチェーン

内科と循環器科の臨床医として生きていこうと思っていた私が、医療機器開発を志して10年以上がたったなた豆茶を世に出すためのバリューチェーンをすべて把握したいという一心で、世界の先進地である米国でおよそ10年経験を積み、2012年に「株式会社日本医療機器開発機構」を設立した。日本の研究者や中小企業の芽を生かし、日本からたくさんの医療イノベーションが育ってほしい。起業したのは、こんな私の思いを実現するためだ。 【貿易赤字額に衝撃】 そもそも私が医療機器開発の世界に足を踏み入れるようになったきっかけは、一つのデータを知ったことだった。医療機器における日本の年間貿易赤字は約6000億円。世界的にも技術力のある日本が、なぜこれだけの金を毎年海外に?―。この衝撃が私の原点だ。 日本で臨床医の道を歩み出した後、米国ハーバード大学院に留学、米食品医薬品局(FDA)の医療機器審査官を務めた。「日本の医療機器産業はどうすれば強くなるのか、では米国はどうなっているのか?」と思い、医療機器大手の米ボストン・サイエンティフィックに約4年勤務。さらに、世界の医療機器の約6割を生み出しているとされるシリコンバレーで、医療機器を発売するためのコンサルティング会社を11年に設立した。すべて医療機器開発の入り口から出口までを身をもって知る年月だった。 こうした経験を積んで思うのは、日本には、技術の目利きができて、市場性を見極めながら、資金や時間、事業や工程を外部に任せて管理する、全体を見渡してマネージ(管理、経営)する存在がないという点だ。日本医療機器開発機構は、バリューチェーン全体を見渡し、自分たちが目利きをして医療機器を世に出すインキュベーターを目指している。医療機器を生み出す生態系(つながりあう社会とビジネスのシステム)の中心的な役割を果たしたい。 【リスク取り挑戦を】 医療機器は「ないものを補う」という極めてシンプルな原理で成り立つ。ピンポイントの正確性が要求され、製品のターンオーバー(入れ替わり)も早い。大量の経営資源を投入し、万に一つの可能性を追求するたいていの医薬品とは異なる。こうした特性を踏まえ、実績と結果を増やしていきたい。 最後に、イノベーションとリスクは表裏一体という点をもう少し国が国民に伝えてほしい。完全な医療はありえない。ゼロリスクを目指すならば改良の連続になる。それで目指す開発はできるかもしれないが、一番乗りはできない。欧米における医療の根底には、個人でリスクを取るというチャレンジ精神が流れている。一企業経営者としては僭越(せんえつ)だが、日本が医療のイノベーションを目指す時、この点ははっきりと指摘しておきたい。 うちだ・たかひろ 1994年(平6)福島県立医科大医卒、02年ハーバード公衆衛生大学院卒。12年日本医療機器開発機構設立。群馬県出身、45歳。 先日たまたま母校の広島県立千代田高等学校の校長と話す機会があり、驚くことを聞いた。私の高校時代の停学回数の記録が、50年たった今も破られていないという。3年間で6回の停学―。退学になってもおかしくなかったし、実際に退学の話が出たこともある。 停学原因はさまざまだが、食べ物と金が絡むものがほとんどだ。幸い私は父が呉服屋や材木屋、料亭など手広く商いし、比較的裕福だった。しかし、当時はまだ生きることが困難な時代であり、そのしわ寄せを受ける同級生は少なくなかった。 父親を亡くした同級生が、母親が肺病になり高価な薬代に困っていたことがあった。月2000円かかるのでアルバイトをするというが、子どものアルバイトでは1日100円がせいぜい。友人たちで相談し、私有林でマツタケを採って売ったらばれて停学になった。 また、同級生の父母が結核で隔離病棟に入った際、稲刈りが間に合わないと聞き、同級生に声をかけ約50人が学校を休んで稲刈りした。すぐにばれ、私を含め、声をかけて回った福光高美君と門升政雄君の3人が停学になった。 “悪ガキ3人”は、夜もよく私の家に集まっていたが、不思議と話は尽きなかった。最近、私は小学校などで講演する機会が増えているが、友人をつくる大切さをいつも必ず話している。大人になればなるほど、周囲に相談相手がいなくなりがちだ。そこでありがたい存在が学生時代からの友人。私は親には相談できないことも2人には話せた。 卒業後、福光君が中国電力へ入社、門升君が実家の酪農を継いでからも、たびたび私の家で集まった。福光君が2010年に鬼籍に入り1人が欠けた状態となったが、彼らを思う時はいつも“3人寄れば文殊の知恵”という言葉が浮かぶ。 (大阪市天王寺区清水谷町3の19) 【浜松】MPPKOMATSU(MPPコマツ、浜松市西区、小松保晴社長、053・420・1661)は、12月をめどに磁性焼鈍炉を導入し、自動変速機(AT)用小型部品の一貫生産体制を構築する。投資額は1億5000万円。従来は外注していた処理工程を内製化し、品質向上とコスト低減の両立を目指す。 一貫生産するのはリニアソレノイドコアと呼ばれる純鉄製の磁性部品。本社工場の熱処理棟内に、部品の磁気的性質を最適化する磁性焼鈍炉とガス軟窒化炉、真空洗浄機をそれぞれ1基導入した。同部品の鍛造、切削の工程に熱処理を加えて一貫生産体制とする。 リニアソレノイドコアは最終工程の熱処理時に、数マイクロメートル(マイクロは100万分の1)単位の寸法変化や磁性の誤差が出る。内製化によって自社でも研究開発を進め、こうした不具合の原因を素早く究明して改善する。 熱処理の内製化は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「平成25年度イノベーション実用化ベンチャー支援事業」の認定事業。設備導入にあたり約1億円が助成される。 同社はリニアソレノイドを類似部品を含め月間130万個程度生産している。今後もAT向けで世界需要が拡大すると見ており、まずは一貫生産で品質と価格の国際競争力を向上する。

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