酒税と少額投資非課税制度(NISA)の見直しを検討

政府・与党は2015年度税制改正で、酒税と少額投資非課税制度(NISA)の見直しを検討する。国際的にも高いビールの税率を引き下げる一方、発泡酒と第三のビールの税率を引き上げることで酒類ごとの税率の格差是正を目指す。一方、NISAの非課税枠を拡大することで若者の株式投資を促し、証券市場を活性化させることも税制改正の課題に浮上している。ただ、いずれの税制を見直しても、税収の大幅な増額にはつながらないとみられている。 酒税収入は1994―96年度に2兆円台を計上したものの、10―13年度は1兆3000億円台まで目減りしている。ビール大手5社の14年上期(1―6月)のビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)の課税出荷数量も前年同期比1・2%減の1億9685万ケースと、上期としては過去最低の数字だった。 天候不順や、サッポロビールの「極ZERO(ゴクゼロ)」の一時的な販売停止なども影響しているとはいえ、酒税収入は減少傾向にある。 酒税は350ミリリットル缶でビール(麦芽比率67%以上)が77円、発泡酒(同25%未満)が47円、第三のビール(原料が麦芽以外)が28円。麻生太郎財務相は「税負担の公平性なども考えないといけない」とし、各税率の格差縮小を検討する考えを示す。税制改正が実現すれば06年度以来となる。 一方、1月にスタートしたNISAは、年間100万円を上限に株式や投資信託で得た配当などへの課税を5年間免除する制度(期間は10年)。金融庁によると3月末までの総買い付け額は1兆34億円に達する。ただ、一定の金融資産を保有する60歳以上が64・9%を占めるなど、若者による投資は促されていない。 菅義偉官房長官は「(非課税枠を)倍増できないか検討したい」とし、麻生財務相は非課税枠を年間240万円に引き上げる可能性に言及。安倍晋三政権は株価動向を重要視しているだけに、年末の税制改正論議で検討する見通しだ。 ニッセイ基礎研究所の櫨(はじ)浩一専務理事は「酒税は酒類によって異なる税率を是正するのが主眼で、酒税収入は全体として大きく変わらないだろう。一方のNISAは賃金が上昇し、雇用が安定しなければ、税制改正だけでは若者の投資は増えない」と分析する。 環境省と経済産業省はテレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・乾燥機、エアコンの回収を義務付ける家電リサイクル制度で、4品目合計の「回収率目標」(仮称)を設定する方針を決めた。これまで使用済み家電の不法投棄や違法な回収事業者への引き渡しなどが課題だったが、目標設定により具体的な対策を強化する。2014年度中に目標設定する方針だ。 現行の家電リサイクル制度では、使用済み家電の不法投棄による回収コストが自治体の負担として重くのしかかっている。また、消費者が違法な回収事業者に排出し、その後のルートが判明しないなどの課題がある。いずれもリサイクル料金の支払いを回避したい、という消費者心理が働いているとみられる。このため、回収率目標を設定し、具体的な対策の効果として毎年点検・評価する。不法投棄などが減らず回収率の向上が見られない場合は、不法投棄などを誘引するとされるリサイクル料金の「後払い制度」から「前払い制度」への変更検討も視野に入れる。 回収率目標は、分母に家庭・事業者から排出する使用済み家電4品目の台数を置き、分子に家電メーカーによる再商品化台数とリース向け販売台数を置く。12年度は分母が1702万台、分子が1544万台で回収率は約90%の計算になる。ただ、推計の域を出ない数量データがあるため、今後データを精査する必要がある。 わが国の設備投資の増加傾向に足踏みがみられる。政府は7月の月例経済報告で、設備投資の基調判断を前月の「増加している」から「増加傾向にあるものの、このところ弱い動きもみられる」に下方修正した。消費増税に伴う駆け込み需要の反動減の影響が尾を引いているためだ。エコノミストの間では、反動減の影響は徐々に和らぎ、設備投資は7―9月期に回復に向かうとの見方が多い。一方で、大企業による増産投資はアジアなど新興国で行われるとみており、中小企業をはじめ内需主導の設備投資を企業に促す施策を急ぎたい。 内閣府がまとめた5月の機械受注統計(季節調整値)によると、設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」は前月比19・5%減と大きく落ち込んだ。大企業に加え、中小も工作機械などを消費増税前に導入する動きが相次いだ。 主要シンクタンクは、消費増税により4―6月期は実質国内総生産(GDP)が減少するものの、7―9月期はプラス成長に転じると予測する。問題は景気回復につれて設備投資も回復が鮮明になるかどうかだ。 日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、3月調査時点で設備過剰感は解消されている。また経済産業省が13年に実施した調査では、導入から10年以上が経過した設備は全体の約6割に達する。こうした老朽化設備の更新はもとより、新規設備の導入を促す呼び水となる施策が求められる。 具体的な施策の一つは法人実効税率の引き下げである。数年内に20%台を「目指す」とした閣議決定を年末の税制改正で正式決定するだけでは不十分だ。減税分を補う代替財源が問題とされるが、それは税体系全体を見直す過程で手当てするべきだ。財源を法人課税の枠内に限定すれば、法人減税の効果が相殺される懸念がある。 また海外生産の国内回帰が相次ぐことは想定しにくいだけに、成長戦略を通じて大手企業による最先端の研究開発投資やイノベーションにつながる国内投資を促さねばならない。企業にはコーポレート・ガバナンス(企業統治)の徹底と製品の高付加価値化が求められる。 景気の下支えの役割を果たしてきた5兆5000億円の経済対策の9割は、9月末までに早期執行され、公共事業はピークアウトを迎える。秋までに政策主導から民間主導の自律回復に転換し、設備投資が増勢に転じることを期待したい。 一方で、海外経済の下振れや原油価格の高騰など、企業収益を圧迫する懸念材料が少なくない。自律回復への転換が想定より遅れるようなら、日銀の追加金融緩和などを通じた追加的な対策が必要になるだろう。

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